岡井隆さん死去・・92歳
戦後の短歌界をけん引した歌人の岡井隆さんが十日午前零時二十六分、心不全のため死去した。
繊細で感受性豊かな叙情歌で注目を集めた人。
1984年2014年まで、中日新聞「けさのことば」を連載した。
内科医でもあった。10日の朝刊、中日新聞から。
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人間には/行方不明の時間が必要です
「茨木のり子集・言の葉・3」
「三十分であれ 一時間であれ/ポワンと一人/なにものからも離れて」いる時間。
「携帯」の「すぐに戻れ」や<今 どこ?>にしばられている時間ではない。
「ふっと自分の存在を掻き消す時間」。
「私は家に居てさえ/時々行方不明になる/ベルが鳴っても出ない」
「今は居ないのです」
「けさのことば」より。
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歳月はさぶしき乳を頒(わか)てども復(ま)
た春は来ぬ花をかかげて
隆の代表歌として知られる。
「ぼんやりしていたら歌なんかできっこない」
「偶然のチャンスをいかにつかむかが大事」
「無から何かを生み出す創作は、リスキーな仕事です」
八十歳のときの言葉。