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雪の上にらうそく立てる忌日あり
後藤比奈夫
(ゆきのへにろうそくたてるきじつあり)
多分、近親者が山で遭難したのでしょう。
句としては凡。
足跡の氷つてゐたる水際かな
辻内京子
水際は湖でしょう、映像として鮮明に描写されている。
ちちははに桜隠しの夜となりぬ
宮坂静生
「父母に」漢字表記でも誰も「ふぼ」とは読まない。
季語「桜隠し」(さくらかくし)は、「春の雪」「春吹雪」「牡丹雪」と同意。
春になって降る雪、北国の雪と異なり、太平洋岸関東以西では、春先の暖かい時期になってから思わぬ雪に見舞われることが多い。
季節的には春の雨となるものが、上空の気温の一時的な低下によって雪となったのであるから、降りつつも緩んだ気温に触れて融けやすく、多少積もってもすぐ消えてゆくのである。
(歳時記)より。
どうして静生は耳慣れない「桜隠し」など斡旋したのか?
なぜ「ちちはは」なのか?
両親は生存されているのか?
「両親が夜桜見物に出かけた、そこへ思いもよらぬ春の雪に見舞われた」
そのような解釈しかできない。