この句を一席に採った選句眼の曇りが情けない。
2020年5月10日、中日新聞・中日俳壇から
己が影均(なら)す左官や春日影・・・一席
いとけなき息乗せて飛ぶ石鹸玉・・・二席
救急車逃水抜けて遠ざかる・・・三席
一席の句・春の陽光が作業中の壁に映っている。
これは特別な発見でも何でもない、よく詠まれている光景。
「己が影を均す」は面白い、でも、「春日影」なんじゃこれ?「影」は、まったく必要ない語。
作者がこういう句を作って発表するのは仕方がないが、この句を一席に採った撰者の選句眼の曇りが情けない。
伝統ある中日俳壇だ、宇佐美魚目、山口誓子の時代は名句も何句かは生まれている。
二席、「飛ぶ」はいらない、シャボン玉、と言えば読者は飛んでいるシャボン玉をイメージする。
作者は「角川平成俳壇」でよく名前を見た実力者。
いとけなき息乗せシャボン玉を風
三席、「遠ざかる」これは説明でしょう。
俳句は説明を嫌う。
もう一人の撰者
長谷川久々子
今更の運命線や四月馬鹿
水谷 美知
いい句だねー感動した。
多分、作者は後期高齢者でしょう、今更私の運命線がどうの斯うのと言われても詮無い事。
私を何歳だと思ってりゃーす。
妻逝けりぽとりと椿落ちしごと
豊田正己
突然死はしばしば耳にする、残されたものは計り知れない悲しみに沈む。
でも、年寄りは椿が落ちるような最後を望む人は多い。
作者は連れ合いの老若は言っていない、言わない強さ。